時計にかけるお金の適正価格

時計イメージ

皆さんどの程度の時計をしているのか?

このサイトでは比較的安価な時計を中心にご紹介しますが、「そんな安価な時計は大人がして良いのか?」という疑問を持つかたもおいででしょう。また、他の人がどの程度の金額の時計をしているのか、気になるというのが人情というものです。
私の話で恐縮なのですが、私はメディア系の会社経営者で、50になるいい大人です。もちろんオーナー兼創業経営者ですから収入については十分以上のものがあります。しかし1000円時計収集をやめられません。いい大人が1000円時計を集めて寝る前に枕元に置いて眺めて悦に浸るのです。ですから、皆さん、大丈夫です。大いに1000円時計を楽しみましょう。
ちなみに、よく時計屋さんが「時計は月給分のものを」とか、「月給三か月分のものを」と言ったりしますが、あれは考慮する必要はないというのが私の個人的意見です。私も仕事柄、偉い人にたくさん会いますし、同業の社長同士の付き合いもありますから、そういう人の時計を目にする機会は多いです。しかし、けっこう偉い人でも皆さんそんなに高い時計はしていませんよ。3万円前後のソーラークオーツやスマートウォッチが多いのではないでしょうか。機械式ではセイコープレザージュなどです。バブルの頃ならいざ知らず、今どき数十万~数百万の時計は非現実的ですし、かえって金銭感覚を疑われる危険性もありますから、例え収入的に買えたとしても買いませんし、欲しいと思ってもいないのでしょう。(欲しかったら買います。それだけ。)
それこそ勲章をもらったような偉い元キャリア官僚だって普通に1万円のクオーツです。取引先の社長さんや、大学の偉い教授先生などでも、せいぜいかけて5万円です。もちろんたまにパティックフィリップなどの海外ブランド時計をしている人がいますが、それは奥様からの記念の贈り物だったり、親から譲り受けた品だったり、何か特別な意味を持つ時計の場合がほとんどです。そして例外なくそれを長く大切に使っている。そういうのって素敵ですね。
成金ではない本当のお金持ちというのは、お金の使い方がスマートです。お金持ちというのはお金があるのが普通の状態なので、自分のことをお金持ちとも思っていません。ですから贅沢はしませんし、足ることを知っているのですね。さらに言うなら物を値段で見るのではなく、自分の尺度で正しく見極めている。これは見習いたいものです。
また、最近は不景気ムードが長かったせいもあり、節約することが美徳とされる時代です。バブルの頃は電車に乗ると、皆さんすごく良い時計をしていました。しかし今は10万円以上の時計となると、持っているのは10人に一人ではないでしょうか。私の感覚でも、3万円から5万円の時計というのはとてもコストパフォーマンスに長けた品が多い印象なので、皆さん正しい経済概念をお持ちで安心しますよ。

正しく選ぶ大切さ

ただ、私が知る限り、仕事でハッタリを利かせる必要がある職業の方は、手ごろな値段の時計だったとしても、あまりキズついた時計はしていません。これは確かです。数本持って使いまわすのでキズが付きにくいのもありますし、一本を痛むほど使うようなことも無いようです。時計はある程度流行がありますから、流行とコダワリを両立すると、どうしても新しい時計をすることが多くなります。

また、例外なくお金持ちの時計の選び方はセンスが良いです。高価かつ良い時計も持っていた経験があるのでしょうね。だから良いものがどういうものか知っているのでしょう。つまり、「高い時計を買ってみる→高い時計の限界を知る→足ることを知る→安価でもセンスの良いものがいい」という経験の積み重ねが、あのセンスを生んでいるのではと勝手に想像しています。
センスが良いので安価なものでも変な時計はしてきません。例えばスウォッチの派手な時計でもTPOは外しません、つまりスウォッチが何者かをよく理解した上で、それを着けて問題ないシチュエーションで着けているのです。TPOを含めて、こういう感覚は本当に大人だなと思いますし、こういう正しい感覚があるから成功できたのだろうと思います。

若い会社経営者の方の場合は少し違いますね。海外ブランドのダイバーズウォッチをスーツに合わせてきたします。まだ若いので値段しか時計の良し悪しを量る基準を持っていないのかもしれません。センスが育つ途中経過ですし、これはこれで、最近の広告においてはアリな組み合わせですからね。
ただし、スーツなら本来はドレスウォッチが王道です。ダイバーズの持つ高度な防水機能など一切無駄ですよね。そのままスーツで海に飛び込むなら別ですが、TPOを考えて時計は選びたいものですね。
私ならお客の前に出る時や大切な交渉事があるなど、相手に隙を見せられない場面では、普通に手ごろな仕立ての良い地味目のドレスウォッチをしていきます。例えばセイコー・ドルチェのクオーツなどでしょうか。あれは時計界のトヨタクラウンです。「これみよがし」な雰囲気が一切ありませんし、かといって、ドレスウォッチとして必要にして十分な仕上げをしてあるので相手に対しても失礼になりません。さらに言うなら年差クオーツで大変正確なので、仕事中の時間管理という意味において大変効率的です。
個人的には趣味性という意味において機械式時計が好きですが、打ち合わせで外に出る時などは時間管理が必要なので、年差クオーツは大変重宝します。

イマドキの経営者で、これみよがしな時計をしてくる人がいたら、そういう相手とは私は取引いたしません。時計がこれみよがしで、車を見て同じ傾向が見えたら、もう決定打です。いわゆる「成金」ですよ。やたらと無駄に「高価なことが一目でわかるもの」を身に着ける人というのは、何かのコンプレックスの反動と受け取られても仕方ありません。例えば学歴コンプレックスなどが代表例でしょうか。
もちろんコンプレックスをバネにして頑張ってきたのでしょうから、それはそれで立派なことですが、正直な話をすれば、コンプレックスはある意味で地雷のようなものです。コンプレックスは少ない人のほうが付き合いやすいし、コンプレックスを持たないように真面目にコツコツやってきた人のほうが立派です。
ちなみに、高価でも「これみよがし」ではない品も存在します。例えばパティックフィリップのカラトラバですね。あれは見た目に地味で目立ちません。そこが上品で良いのです。だからこそ「高価であることをアピールしたい人」は身に着けませんから、安心できます。

足ることを知る時計選び

要するに、足ることを知った人は、あまりブランドに惑わされないのです。ブランドに惑わされるのではなく、本当にその品を見て、良いか悪いかを判断できるのですね。それは自分の中に尺度を持っているということでもあります。
ですので、値段ではありません。安価でも良いものは存在します。メーカーやブランドではなく、その品物そのものを観てみましょう。納得できる一本が必ずあるはずです。
その極端な事例が、このサイトで多くご紹介しているような1000円時計なのです。もちろん1000円ですから万のケタと同じようにはまいりません。中にはどうしようもない時計も存在します。とはいえ、光る一本があるのもまた確かなのです。作り手が上手かったのか、幸運が重なったのか、その理由は様々でしょうが、奇跡の一本があることもまた確かなのです。それを探してみるのも面白い趣味ではないでしょうか。

時計に貴賎なし

私自身、もう50になるので、それこそ時計には散々金をつぎ込んできました。「どんなものかいな」という興味から、かなり高額な海外製品も買ってみたことがあります。とはいえ、私にとっては理解できない世界でした。そんな時、Amazonのサイトで出会ったのが、1000円時計であり、日本メーカーの海外限定モデルだったのです。これらは実用品ですから、当然無駄がありません。その無駄の無さが私にとってはとても美しく思えたのです。
これらはある意味でスイス製の300万円の時計を凌駕していました。そして、それまで「オモチャ」と決めつけ真面目に見てもいなかった自分に気が付いたのです。眺めれば眺めるほど、これらはよく出来ていました。限られたコストの中で作っているからこそ作り手の思想(取捨選択の方針)も見えるくらいです。

最近チープカシオが若い人の間で流行しているようですが、それも納得です。時間を知るという限りにおいて、カシオのシンプルなデジタル腕時計などはとても機能的です。Gショックである必要はないのです、だって、普通に街中で生きていれば腕時計を象に踏まれることは無いのですから。
ちなみにGショックはアメリカ軍の方々に大変評判がよろしいようで、頑丈で信頼性が高いから戦地では安心感があるのだとか。
つまるところ、「活躍の場に合った正しい時計」こそが、生き残る真の勝利者となりうる時計だということでしょう。
仕事の打ち合わせでスーツに合わせるなら仕立ての十分なドレスウォッチ、街中で時間を知るには時計の機能に徹して無駄を省いたチープカシオ、戦地に赴くなら強靭な信頼性のあるGショック。これらは大変合理的です。
時計は値段ではありません。合目的的にできている時計が一番なのです。そういう意味では時計に貴賎なし。高いから価値があるのではなく、すべての時計に価値があると思うのです。

足ることを知れば、1000円のクオーツ時計、1万円の機械式時計が楽しくなります。100本買ったって、高級時計1本の値段に満たないのですから、お財布にも優しい趣味です。大いに楽しみませんか?