シチズンQ&Q~QZ02J301 ホワイト

シチズンのQZ02J301 です。たぶんですが、Amazonでは2018年の夏くらいに見かけるようになったので、比較的新しいモデルです。
この時計の良さは一言で「かわいい」ということです。43mmと大き目のケースにストレートラグの無駄のないデザイン。ベゼルは薄くテーパードになっており、ダイヤルへの視線誘導を上手に促しています。風防はフラット、そして白いダイヤルにメタリックブルーのインデックスに、これまたメタリックブルーの針。そしてベルトもブルー。ダイヤルを白にしてくれたおかげで、とても透明感のある印象です。
最近よく耳にするバウハウス系というジャンルに属する基本デザインです。機能的ですしシンプルですから、これが一本あれば仕事でもプライベートでもまったく困りません。
何より驚きなのが、こんなにかわいくオシャレな時計がAmazonで2138円と破格の安値。しかしこのQZ02J301 は安さを感じさせません。メタリックブルーのバーインデックスは裏から見るとプレスのようですが、一見してアップライドと見える仕上がりです。ケースについてはベゼルが薄いので合金+メッキの安さが目立ちません。コストの中で可能なことから逆算し、うまく安さが見えないようにデザインそのものが計算されていることがわかります。

本体の出来が良いからベルト交換も楽しい

私はこの時計のベルトをFullmosaのクイックリリース式に交換しています。ホワイト+ダークブルーの組み合わせというちょっと変わったベルトですが、1800円前後とは思えない仕上げです。
これがまたQZ02J301 に似合うんです。ホワイトが増える分、さわやかな印象がますます強まる感じです。

時計屋の仕事が光るシチズンQ&Q

チープカシオもかなり買いましたが、私はシチズンの廉価版シリーズであるQ&Qをひと押ししたい。チプカシは樹脂製ケースを時計業界進出時から採用していたカシオだけあって、プラスチッキーなモデルが多い印象ですが、こちらのQ&Qは、いわゆる「時計屋さん」であるシチズンだけあって、合金ではあるものの金属製のケースを使った、時計として王道の雰囲気を持つものが多い印象。このQZ02J301 は、その中でも私のイチオシです。

一番の理由はその視認性の高さです。私は時計を見る時、まず最初に視認性の高さを確認します。時計である限り、視認性が悪いのはいただけません。この時計は極めて単純な「白ダイヤルに青針」という色と明度のコントラストで視認性を高めています。一番確実な方法ですね。
高価な時計ですと、針を太くすることで視認性を確保している事例が多いですね。でも安価な時計というのはムーブメントのトルク(針を動かす力)が少ないので、電池の寿命など様々な要素を踏まえると、重たい針は使いにくいのです。ちなみにこの時計などはダイヤル径が大きいので、針が長くなりますから、当然あまり太い針にはできません。ですから色でコントラストを付けてくれるだけで、このように十分な視認性になります。当たり前ですが、時間が見やすいというのは、ストレスが無くて、それだけで身に付けたくなるわけです。

背景美を少しオーバーに語る

時計はモノだけ美しくてもダメで、歴史などの背景美が必要というんは私の持論です。その意味でもこのQZ02J301 は、なかなかの魅力を持っています。たかだか2000円の時計ですから、背景もへったくれもないだろうとお思いでしょうが、ちょっと意図的に、熱く語ってみましょうか。

マニュファクチュールの品であること

まず、シチズンという会社は時計のガワだけでなくムーブメントも作っている、いわゆるマニュファクチュールです。当然このQZ02J301も、まぎれもないオールシチズン製品。シチズンの血統ではない部品は何一つ無いというのが魅力の一つです。
当然、このQZ02J301 のムーブメントもシチズンミヨタのものです。裏蓋にはキャリバーの番号表記はされていませんし、裏蓋を開けてムーブメントそのものを見ても型式が書かれておらず、「Q&Q」と刻印されています。シンプルなアナログ三針ムーブというと、シチズンミヨタCal.2035か、その派生形であるCal.2036あたりかなと思いますが確信はありません。

シチズンミヨタムーブメント

人類のインフラ「シチズンミヨタクオーツ」

Cal.2035は、時計業界では「人類のインフラ」と言われています。なぜなら1980年代に開発されて以降、これまで累計30億個以上(下手すれば40億以上)も製造されているのです。もっと言うとCal.2035の派生形も含めた兄弟分(日付有のCal.2115等)を入れたら、世界で生産されている時計のうち半分近くにこのラインのムーブメントが搭載されていると言っても過言ではないでしょう。
今流行となっているカシオスタンダード、通称「チープカシオ」の三針アナログ時計にも、実はシチズンミヨタのCal.2035と、その派生形がOEM供給されているようです。一見Q&Qとはライバル関係にありそうですが、実際は共闘関係というか、共存共栄できているのですね。元々時計屋ではないカシオからしたら、廉価版三針ムーブメントを自社開発するよりも、量産効果で安価に手に入るムーブメントがあるなら、そっちを使ったほうが合理的という判断なのでしょうか。
実際、シチズンミヨタのクオーツムーブメントは日本だけでなく海外の時計でも搭載例が山のようにあります。最近目にするようになってきたヘンリーロンドン、ダニエルウェリントン、スカーゲンなどデザイナーズブランドの時計もシチズンミヨタの普及型クオーツです。要するに、クオーツムーブメントのような電子デバイス製造のノウハウが無いデザイナー主導のブランドで2万円前後の時計というと、大抵はこのシチズンミヨタのクオーツムーブメント搭載機と考えて良いかと思います。時計業界をまさに影で支えている存在、それがシチズンミヨタのクオーツなのです。
そんな人類のインフラを着ける。何とも心地よいことではありませんか?しかもここにご紹介しているQZ02J301 なら、ガワも含めてシチズンです。すべて自社製造のマニュファクチュール製品というだけでなく、まさに「人類のインフラ搭載のマニュファクチュール製品」なのです。これはある意味、どんな名門メーカーもかなわない背景美ではないでしょうか。

QZ02J301は買いか?

買いです。シンプルな可愛い時計がお好みなら、このモデルは候補に入れておくべきです。時計は値段だけで語れません。2000円には2000円なりの哲学があり、10万円には10万円の哲学があるのだと思います。いかに2000円をうまく使うか?ここがシチズンは本当に上手です。

視認性の高さは特筆に値するものですし、何よりデザインがとてもきれいです。そしてシチズンミヨタの信頼性の高いムーブメント搭載機ですから安心です。普段高価な時計をお使いの方々も、「たかが2000円」と言わず、だまされたと思ってコレを一本持ってみるとよいかもしれません。案外、普段使いの時計としては良い買い物かもしれませんよ。