シチズンQ&QファルコンQB38

シチズンQ&QファルコンQB38シチズンのミリタリーウォッチデザインベースの品です。色違いで三種類今のところ販売されています。海外モデルですので、正確なところは不明なのですが、2018年11月末に初めてネイビーモデルが出て、その後の12月に入ってから他の白文字盤のモデルが出てきましたので、そのあたりがリリース時期になるのではないかと思います。
私も発売されたと同時にAmazonで予約して、やっと三種類届いたところです。
二重の24時間インデックス、太い針、ナイロンベルト。ミリタリーの基本要素を取り入れながら、ベゼルが薄めなのが特徴です。なかなかのバランスのデザインではありませんか。
一般にミリタリー時計では付き物の日付窓はありません。シンプルな三針であるところも好感が持てるところです。

今回かなり力が入っているのでは?

私が注目したのは、文字盤のインデックスの色です。過去の事例で言うと、例えば白文字盤に黒文字、黒文字盤に白文字と二種類作って終わりというところが、今回のQB38は白文字盤のインデックスが二種類用意されています。
上の写真をよく見ていただくとわかるのですが、ネイビーのベルトがセットになるQB38-314はネイビーのインデックス文字、カーキのベルトがセットのQB38-304は黒のインデックス文字という具合に、ベルトのカラーに合わせてインデックスの印刷カラーを変えているのです。これはちょっとシチズンのホンキを感じます。

シチズンQ&Qとは

シチズンQ&Qは、いわゆる大量生産大量販売用のシチズンのシリーズです。Quality(品質の良いものを)&Quantity(より多くの人へ)というコンセプトから生まれたシリーズで、同じようなシリーズですとカシオの「カシオスタンダード」が有名ですね。カシオスタンダードは「チープカシオ」や「チプカシ」などと言われてコレクターもいるくらい有名ですが、こちらのシチズンのQ&Qも負けていません。
以下の写真を見るとわかりますが、いわゆるショーケースに収めるようなものではなく、ワゴンや棚に吊るして売っている時計です。

シチズンQ&Q箱あり写真よくこういう時計を見ますでしょう?一見して「安物」と思うなかれ、実は本当に優れたモデルが埋もれている可能性があるのです。今回ご紹介するQB38が、まさにそうです。
実際、この時計はAmazonで1382円で購入しました。もちろんAmazonプライムで送料もかかりませんから、時計そのものは1000円程度ではないかと思います。すごく安いのです。
Q&Qというシリーズはシチズンですから、もちろん中身はシチズンミヨタのクオーツムーブメントです。ミヨタといえば、世界一ムーブメントを作っていると言っても過言ではない会社ですから、その信頼性という意味では保証付きです。

安価さが見えないのも美点

この時計の良さは、安価でありながら安価さが見えないということです。Amazonのレビューにも書いたのですが、そもそも論として、ミリタリー時計というのは安価なものなのです。
「本物のミリタリー時計は」という注釈付ではあるのですが、ミリタリー時計は戦時に軍が使うものですから、大量生産できる簡素な設計が求められます。例えば視認性さえ確保できるなら文字盤のインデックスなどはプリントで良いという思想ですし、またガラス風防が割れたら危険なのでプラスチックがデフォルトです。ベルトも汗をかいても不快にならない布製が一般的です。
そんな具合ですから、いわゆるブランド品と呼ばれるタイメックスや、セイコー5、そしてアルバあたりのもっと値段の張るミリタリーデザインの時計でも、(極論を言えば)大した造りはしていません。いわゆる徹底的に色気を排除したところに存在するジャンルの時計なのです。
これが例えばドレスウォッチであるなら、インデックスをプリントでやってしまうと安物にしか見えませんから、がんばってアップライドや、せめてプレスにして立体感を演出する必要がありますが、そもそも定義として「インデックスはプリント」と決まっているようなものなので、安価なプリントインデックスが弱点にならないのですね。
そういう事情もあり、値段が安いのに、このQB38は大変立派な本格派のミリタリーウォッチに仕上がっています。
こういうミリタリーの良さをシチズンが狙っていたかどうかはわかりませんが、本当に企画性の勝利とはこのことです。すばらしく説得力のある時計になっています。これを企画した人はすごいですね。

D026の派生モデルか?

さて、Q&Qシリーズをご存じの方ならおわかりかと思いますが、このQB38は、同Q&Qシリーズでは名作とも呼ばれるD026と同一ケースを使ったバージョン違いとも言うべきモデルです。元となっているD026もまた、ミリタリーデザインの良さである「視認性の高さ」という観点からは優秀な機種でしたが、今回のQB38も、すばらしく視認性が高く、時計としての機能美に溢れています。

シチズンQ&Q二種類の比較

比べてみるとわかるのですが、コンセプトは同じですね。日付窓の有無の違いはありますが、明らかに同一コンセプトのモデルです。D026のほうが赤ステッチ入りのベルトを使用していたり、あえてシンプル方向に振った文字盤デザインを採用するなどドレスウォッチに近い気がしますが、両者ともミリタリーの美点である「視認性の高さ」を武器にしているモデルと言えるでしょう。

ミリタリーの視認性

ミリタリーウォッチの良さはいくつかありますが、老眼でも眼鏡無しで時刻を読める視認性の高さは美点の一つです。私は老眼がひどくて、実は若い頃に買った時計はもう無理です。例えばダイヤル(文字盤)と針の色が同色系の時計はまったく見えません。
ミリタリーは、黒のダイヤルに白の太い針、もしくは白ダイヤルに黒の太い針という具合に、チラッと見るだけで時刻を読めるように作っています。これが老眼には優しいのです。そういう意味では上記写真右のD026が売れたのもよくわかりますし、さらにその派生形であるQB38が生まれた理由もわかります。それと、日付をやめてしまったのも、コストの配分として、どうせ見えない小さな日付窓を作るくらいなら、それをやめてしまってダイヤルやベルトにお金をかけたほうが利口です。
そもそもこういった安価なクオーツの日付というのは「デフォルトで見えないもの」なのです。高級品なら日付窓にレンズを設けるなどの対策をしていますが、安価な時計ではそういう対策もできず、小さすぎて絶対に見えません。有っても無くても読めないのですから変わらないのです。
そんな役に立たないものを残すくらいなら、その分のコストをベルトに回してほしい。そういう考え方をしたデザイナーがシチズンにもいたのかもしれませんね。

優れたナイロンベルト

そのベルトですが、いいですよ、これ。なかなか良いベルトです。もちろんミリタリーですからナイロンです。とはいえ、子穴(ベルトの穴をこう言います)周りに革を貼って、強度を保つようにしています。よくある穴の周りを縫って補強したものではありません。大きな革を貼ってあるのです。このほうが細かく穴を縫って補強するより簡単なのでコストがかからないのか、そのあたりはわかりませんが、なかなかデザイン上のアクセントになっていますし、頑強という意味でもミリタリーとしては合理性があるデザインです。

シチズンQ&Qベルト

なかなかかっこいいベルトです。これは本当に気に入りました。たぶん換えずに使うと思います。
ナイロンベルトというのは結構ほつれてくるのですが、今のところは大丈夫。しばらく使ってみて強度を試してみたいと思います。

落ち着いた本物を知る企画者の存在を感じる

モノにはそれを作った人の思想が現れます。この時計には「一円も無駄にせず良い時計を作るぞ」という気概が感じられます。無駄を感じません。
そして無理を感じないのもまたこの時計のすごさです。安い時計というのはどこかに無理が生じることがあります。「安いからこれができなかったんだな…」と残念に感じることがあるのです。ところがこの時計はミリタリー(そもそも安い造りをしている)の特性を逆手にとって、安価さを見せない造りになっている。
これを企画した人は天才か?
時計を知り尽くしているとしか言いようがありません。これほどの企画者が高価な時計を企画したらどれほどすごい時計を造ることか。ところがシチズンは、実際のところ3万円台の時計がまるで駄目です。クラブ・ラメールの記事でも書きましたが、あれは残念な結果に終わってしまっているのです。
シチズン時計にはこのQB38を企画したほどのプロデューサーがいるのに、クラブ・ラメールはなぜああなってしまうのか?部署ごとの交流は無いのだろうか?正直、クラブ・ラメールを企画した人は、私の個人的な感想としては「若さ」を感じるのです。時計に何が求められているのかわかっていない気がしてしまう。ところがこのQB38には「老練」を感じるのです。わかりすぎるほどわかっている。すごい企画者です。

シチズンQ&QファルコンQB38は買いか?

買いです。買って良かった。本当に良い買い物をしたと思っています。三種類まとめて大人買いしましたが、使いまわしてみたいと思っています。
関係ない話ですが、私はバイクに乗るのですが、バイクに乗っていると腕時計は見やすいものに限ります。そういう意味ではこういうミリタリーベースの時計は視認性が高いので、便利です。また、バイクに乗る時のグローブが時計に擦れると、ちょっと高価な時計によくあるステンレス研磨のケースですと、本当に細かい擦り傷が入ってくすむのです。そういう意味では、安価なことも助かります。
見やすく安価でカッコいい。さらに言うならミヨタのムーブメントで信頼性もバッチリ。こんな良いものが1000円少しで手に入るのです。(老眼でお困りの)大人にこそおすすめしたい時計です。