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時計趣味は金がかかるか?

時計趣味時計趣味は金がかかる。私もかつてそう思っておりましたが、でも高額な腕時計を見ていると、ある事実に気が付くわけです。つまり…

外装に貴金属を使っているものがとても多いという事実

そうなんです、つまるところ月給3か月分の時計というのは、大抵はホワイトゴールドやいわゆるピカピカの金を使っているわけで、そりゃ高いだろうと。
では機械として正しい範囲で高価なものというと、一体どのあたりになるのだろうか?

たぶん50万円が上限でしょう。

というのが私の考え。わかりやすいところで言うとグランドセイコーですね。9Sムーブメントを搭載している機種なら、もう機械式としては技術的到達点と言っても過言ではありません。これらは大体実売にして40万円前後からというのが相場。
いわゆる複雑機構などを除いて、一般的な時計の機能を9Sほど真面目に追及しているムーブメントが他にあるでしょうか?これ以上高い時計を造るとなると、どこかに金のかかるものを入れ込んでいかないとならないわけです。すると貴金属を使ったり、または職人のカンに頼った量産不可能な機構をおごる必要が出てくるわけです。職人のカンというのはすばらしいですが、同時に「量産不能」であるばかりか、それは工業製品とは言えないのです。
ここらで工業製品としての時計の魅力を楽しんでみるのも良いのでは?

取捨選択を眺めるという楽しみ方

そこで面白いのが、いっそのこと「値段を決めて時計を眺める」という考え方。例えば3万円を中心とした入門機クラスという値段で時計を見てみることにしましょう。この値段ですとメーカーからしたら取捨選択の必要が出てきます。何かを捨てないと、この値段だと時計を商品化できないのです。

実売3万円台の機械式時計で無敵のセイコー

セイコーメカニカル2018年末現在、この価格帯で最も良い時計を造っているのがセイコーではないでしょうか。セイコーは理想が高いですね。悪く言えばあきらめが悪い。
プレザージュの機械式時計は実売3万円前後からありますが、これらに搭載されている4R系ムーブメントは、まさに質実剛健。必要にして十分な機能を持っています。ハック機能もありますし、何か機能的に削っているかというとそうではない。
徹底的な量産でムーブメントを安価にして、その余力で可能な限りクオリティの高い外装を目指す。こういう量産を前提とした手法だと数を売らないとならないので、マーケティングとも調和を取らないとならない。つまり凡人には絶対にできない、すごい正攻法の手段で3万円台の時計を攻め込んで作っているのです。
先に述べたように、工業製品としての時計というのは、マーケティングを無視しては語れません。会社という組織が全力で競争力のある製品を生み出していく。これは「会社が一丸となって闘った成果」なのです。
ではどのくらいすごいのか?
ダイヤル(文字盤)の時間を示す目盛をインデックスと言ってますが、このインデックスが、この値段なのにアップライド、つまり盤の上にパーツで載せているわけですね。さらにケースは面によって仕上げを変えて、例えば鏡面とヘアライン仕上げなどを使い分けて立体感を出すなどの工夫が見られます。こういう仕上げというのは高価なものでは当たり前ですが、普及価格帯としてはかなりハードルが高いのです。

3万円台では惨敗するも1000円時計の金字塔Q&Qを擁するシチズン

The Marineケースとダイヤル同じように3万円以内でも機械式時計を手掛けているシチズン。クラブ・ラメールなどは実売2万円の前半からありますが、こちらは40年以上も昔の基本設計の82系ムーブメントを搭載しています。もうすでに償却できている部品ですが、機械式時計を作るにあたり、シチズンはこの機械式ムーブメントを搭載してラインナップを拡げています。
しかしこのクラブ・ラメールのムーブメントは古いがゆえにハック機能(秒針停止機能)がありません。昔の時計ならハック機能が付いただけでありがたかったかもしれませんが、何でも便利になっているご時世ですから、ハック機能は欲しいところです。
さらに言うならケースは仕上げが一様ですし、ダイヤルのインデックスはプレスで盛り上げたものだったりと、コストがどうしても見えてしまう。機会があればクラブ・ラメール以外のシチズンもよく見てみたいと思いますが、これを見る限り、コストはあまりかけていません。どこまで機械式時計に注力しているか会社のスタンスに疑問を感じてしまうのです。シチズンQ&Qqb38しかしシチズンは世界で最も規模として大きな時計会社と言っても過言ではありませんので、シチズンの名誉のために言わせてもらうなら、彼らはQ&Qというすごいブランドを確立しています。いわゆる1000円時計ですね。(上の写真はQ&QファルコンQB38
もちろん1000円時計といっても本当に1000円ではありませんが、しかし1300円から4000円くらいの間で、よくホームセンターで透明の袋に入って棚に吊るして売っているアレです。よくよく見るとこれらの時計はカシオやシチズンがメインです。あとはよく知らない中国のメーカーなどがありますが、シチズンのQ&Qは、例えショーケースにすら入れてもらえなくても本当に良くできています。特にシチズンQ&Qのミリタリー系のデザインのものは必見とも言える出来栄えです。
「大人が1000円時計?」とお思いかもしれませんが、変な海外ブランド品で「横文字ブランドにやられちゃってるなあ」的な痛さを感じさせない「わかってる感」があるので、実は「違いのわかる大人」なら、ぜひとも楽しんでいただきたいジャンルだったりします。

安物はやらないが機械式入門機が光るオリエント

オリエントバンビーノオリエントは最近エプソンに吸収されてしまいましたが、すばらしい時計を作っています。1000円時計のような安物は見かけませんが、中級の実用機械式時計では日本一の存在かもしれません。もしご予算が3万円以内ということなら、ぜひオリエントを眺めてみてほしいところです。
上記写真はバンビーノというシリーズです。実売で1万2000円から2万円台という価格帯のシリーズですが、コストパフォーマンスはピカイチです。ちなみにこれはAmazonのタイムセールで14000円程度で入手したものです。
ムーブメントはCal.F6724。見る限り46系という1971年からある古いムーブメントの派生形ではないかと思われます。オリエントのムーブメントというのは安価でもすごく正確なものが多く姿勢差に強いです。同じグループの企業であるセイコーとは違って、スプリングドライブのような新技術を使って精度を追及するというのではなく、古くからの手法で伝統的なムーブメントに熟成を重ねながら高精度な製品を作っています。もちろんこのF6724もすごく安定しています。当たりを引くと日差2秒程度で収まるものすらあるのです。
また見た目も洗練されています。ケースの材質はそれほど高価ではないにせよ、仕上げは面によって鏡面とヘアラインを使い分けていますので立体感もありますし、インデックスの仕上げにも安さが見えません。クリスタルガラスの丸い風防も一般に安い時計に使われるような単なるミネラルガラスに比べると透明感も高い上に一定の強度を持っています。特筆すべきはベルトの質感です。よく出来たベルトだと思います。2万円で時計を買うなら間違いなくこのバンビーノはおすすめです。
つまり過不足の無いバランスのとれた時計を作る会社と考えるとイメージしやすいかと思います。

各メーカーの思想を楽しむ

こうやって工業製品として時計をとらえて値段を決めて観てみると、本当に面白いですし、各メーカーの思想のようなものがよく見えるのです。
このウェブサイトでは、貧乏時計趣味を楽しむ私が個人的な意見を繰り広げながら、様々な時計をご紹介してまいりたいと思っています。

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